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 第84回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
大宮アルディージャ、予想通りに苦しみ、順当に勝利。
第84回天皇杯全日本サッカー選手権大会 3回戦 大宮アルディージャvs.アローズ北陸

2004年10月10日(日)13:01キックオフ 大宮サッカー場 観衆:1312人 天候:曇
試合結果/大宮アルディージャ2−1アローズ北陸(前1−0、後1−1)
得点経過/[大宮]バレー(12分)、橋本(46分)、[北陸]北川(75分)


取材・文/有吉広紀

 JリーグチームがJFLチーム相手に1点差の勝利と聞けば、大苦戦かと感じる方もいらっしゃるだろう。しかし試合後の大宮アルディージャ・三浦俊也監督や選手たちの表情からは、そんな思いは微塵も感じなかった。反省材料はもちろんある。だけど勝ったのは我々、すべては予想の範囲内での出来事だった。そんな雰囲気さえ感じた。



 毎年元日に行われる決勝戦が恒例となった、天皇杯全日本サッカー選手権大会。例年はJリーグ終了後の11月下旬から集中開催されていたが、84回目を迎える今大会は試合日程が変わり、9月23日に早くも熱戦の火ぶたが切って落とされた。また今まで1回戦から登場していたJ2チームが3回戦から、同じく今まで3回戦から登場のJ1チームは4回戦から登場する。

 大宮アルディージャの対戦相手は、富山県代表のアローズ北陸。MF山本翔平(前所属水戸ホーリーホック)や、川崎元気(前所属サガン鳥栖)など、以前Jリーグチームに所属していた選手が何人もおり、2回戦で広島経済大を2−0で破ってここまで駒を進めてきた。ゴール裏にはレプリカを着たサポーターが大勢かけつけ、格上相手に一泡ふかせようと、試合前からリズミカルな応援を繰り返す。しかしここまでJFL12位という成績が示すように、力の差はある相手だと言える。

「休ませたいという選手も出てくるかもしれませんが、公式戦ですから当然勝ちっていうのを第一目標にしていきたい、というところは変わらない」と先週のJ2リーグ第37節湘南戦後の会見で三浦監督は語っていた。このコメントから考えると、ベストメンバーから何人かを入れ替える形になることが予想できた。リーグ戦の途中に組み込まれた公式戦に、どのようなメンバーで臨むのだろうか。



 注目していたスタメンは、ここまでリーグ戦出場機会の少ないメンバーが多く起用された。またポジションを見ると、いつもとは違うポジションである選手が多く見受けられる。DFでは若松大樹が右サイドバックからセンターバックに、西村卓朗は右から左のサイドバックへとチェンジしている。MFでも左サイドでの起用が多い島田裕介が真ん中へ入り、久永辰徳はいつもとは反対の右サイドでの出場である。慣れないポジションでの起用は、テストという意味合いも含まれているのだろう。

 一方北陸はFWの1人がやや下がり目の4−4−2のシステム、DFラインを高く保って中盤をコンパクトにし、MF川崎を中心にMF石橋直希やFW北川佳男がボールに絡み、ゴールを目指していく。

 開始直後は、「前線からボールを追い込んでいって、ボールに対して常に数的優位を作る」(草木克洋監督・北陸)戦術を取る北陸の積極的なプレッシャーに、大宮はうまくボールを繋げずシュートにすら持ち込めない。FWバレーがチーム初シュートを放ったのは、10分を過ぎていた。しかしその2分後、大宮があっさりと得点を奪う。MF橋本早十のパスが相手DFの頭を越え、そのボールを奪ったバレーが右足でしっかりとゴールへ流し込んだ。7月27日のJ2第24節福岡戦以来久々のゴールだった。

 その後もボールをキープして主導権を握る大宮ペースで試合は進む。だが得点には至らず、1−0のまま前半は終了した。そして「2点目を取るまでは0−0のつもりでやれ」とハーフタイムに三浦監督から指示を受けた後半開始直後、大宮に待望の2点目が入る。FW森田浩史の絶妙な胸パスを受けたMF橋本が持ち込み、GKの位置を見て冷静に左足を振りぬき右隅に叩き込んだ。



 後半1分で2点のリード。実力差を考えれば、大宮が着実に得点を重ねて完勝してもおかしくない展開かと思われた。しかし、北陸はそうはさせなかった。徹底して激しいプレッシャーをかけ、大宮に前線への効果的なボールを入れさせず、逆に中盤でボールを奪うと、パスをつなぎながら、MF石橋や途中出場のFW小林羊汰らがかき回してペースを握る。徐々に受け身の時間帯が増えていく大宮。少しずつ試合の流れが変わっていく。

 そして北陸は30分、CKからFW北川が得点を挙げ2−1と1点差に詰め寄った。歓喜に沸くサポーターの声援を受け、北陸の中盤の運動量が更に活性化する。その勢いのままに41分、北川の強烈なヘディングがクロスバーを直撃しあわや同点という場面を作りだす。この北陸の攻撃に場内は騒然となる。

 しかし、大宮にもチャンスがなかったわけではない。34分とロスタイムの2度、バレーがGKと1対1となる場面があったが、決めることができない。こういったビッグチャンスを決めていれば、もっと楽な試合展開になっていたはず。結局試合は、このまま2−1で終了したが、大宮にとっては今ひとつすっきりしない試合になってしまった。



 トーナメントということを考えれば、勝つことが大前提であることは間違いない。その大前提を踏まえながら、大宮は、今後のJ2リーグ戦を考えてメンバー選考やポジションなどのテストを試みた、そんな試合だった。テストなのだから苦戦するであろうことも織り込み済み、そのなかで主導権を握って試合を進められたのだから、三浦監督の口から「ほぼ達成できたかなと思う」と満足のいく言葉が出てきたのだろう。決定力不足は相変わらずだったが、守備面は顔ぶれが変わってもある程度守ることができたことは収穫であろう。

 この試合が公式戦初出場だった橋本は、「勝って当然の試合だった」と振り返った。ここまでサテライトや練習試合など多くの試合に出場し、「1試合に1アシストか1点」をテーマに戦い、結果を残してきた。この試合の活躍は、その高い意識がもたらした結果である。三浦監督もその技術の高さは評価していたし、フィジカル面など鍛える部分はあるにせよ、今後期待の選手の1人であることは間違いない。

 さて、敗れたアローズ北陸は普段通りの戦い方で大宮に挑んできた。「今までやってきたことをどれだけ表現できるか」という草木監督の言葉を受ければ、格上の大宮相手に試合を通じて自分たちのサッカーを実践できていたと思う。1対1で勝てなくとも組織で対抗し、1人、1人がさぼることなくプレッシャーをかけていく戦術に大宮は明らかに戸惑っていた。しかしシュート数6本が示す通り、フィニッシュまでなかなか持ち込めなかったが、これは仕方のないところか。しかしJ2屈指の守備力を誇る大宮相手にセットプレーから得点を奪ったのは、次に繋がる得点だったのではないだろうか。

 最小得点差ながら順当に勝ち進んだ大宮は、4回戦で清水エスパルスと対戦する。11月13日と昇格争いも佳境に入る時期での対戦だけに、この試合のようにメンバー選考等難しい面もあるだろう。J2リーグ戦とJ1チームとの対戦という2つの選択肢を前に、三浦監督はどういった判断を下すのだろうか。


草木克洋監督(アローズ北陸)記者会見
三浦俊也監督(大宮アルディージャ)記者会見


(大宮アルディージャ) (アローズ北陸)
GK: 安藤智安 GK: 平地由享
DF: 斉藤雅人 若松大樹(89分/松本大樹) 木谷公亮 西村卓朗 DF: 三好拓児 金丸秀和(67分/小林羊汰) 山本寛幸
MF: 氏家英行 島田裕介(67分/喜名哲裕) 久永辰徳 橋本早十 MF: 山本翔平 川崎元気 川上秀治 石橋直希 小柴誠
FW: バレー 森田浩史(76分/横山聡) FW: 上園和明(84分/永濱裕規) 北川佳男
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