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 第84回全国高校サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
「日頃の成果とチームの成長」、風に苦しんだ鹿島学園が浦和東を下す
第84回全国高校サッカー選手権大会 3回戦 鹿島学園高校vs.埼玉県立浦和東高校

2006年1月3日(火)12:10キックオフ さいたま市駒場スタジアム 観衆/8.0337人 天候:晴
試合結果/鹿島学園2−1浦和東(前0−0、後2−1)
試合経過/[浦和東]小森(41分)、[鹿島学園]榎本(55分)、佐々木(62分)


取材・文/砂畑 恵

「どちらも様子見」(浦和東・野崎監督)という面の色濃い前半だった。それも駒場に吹き荒れた風を考えれば仕方のない部分があろう。公式記録には中風と記載されていたが、主に風の方向は、浦和レッズ的な言い方をすればホームからアウェイゴール裏へ吹き抜ける。プロならまだしも高校生のキック力では風下に回った方が苦戦するのは目に見えて明らか。風下側に回ったチームがどうやって闘うかでゲームは左右しそうだ。



 この試合では前半、風下に回ったのは浦和東。「1失点までは許すよ」と、野崎監督は選手の気持ちをほぐしてピッチに送り出した。浦和東は中盤を深めにして守備を重視する慎重な構え。しかし風上の鹿島学園もあまり前から仕掛けてはこない。

 風下ながら序盤のペースを掴んだ浦和東。11分、14分と続けて菅沼がヘディングシュートを放つ場面もあり、過去の2戦と比べれば決してゲームの入りも悪くはなかった。ただどうしても2列目以降を引き気味にしている関係上、前線にボールが入った時のフォローが少ない。31分、縦への長いパスからドリブルでかき回した渡邊がスライスするようなセンタリングをDFの間に通し、後方から走り込んだ鈴木がボレーシュートという場面があったが、少人数での仕掛けでは手堅い守備で鳴らす鹿島学園を崩すことは厳しい。

 対する鹿島学園はと言えば、守りの面では不安に感ずる点はない代わり、攻撃に関しては風上という有利さを活かせないまま、前半を終えてしまった。特段にスタンドが沸くシーンもなく、シュート2本と浦和東の3本よりも少ない。そして後半は風下へとフィールドを移す。しかも相手は後半に強い浦和東。様々に要素がきつくなるのは想像に難くない。



 やはり後半、風上に立った浦和東は一気に攻勢に出てきた。開始1分、菅沼がゴール前に攻め込んでCKを獲得。それは鹿島学園がやり過ごしたに見えたが、ゴールキックの再開に鹿島学園はミスをして、前線に上がっていた小森がボールを奪い、オーバーヘッドキック。風を味方にしたシュートはGK安藤の頭上を越えて、ふんわりとゴール内に落ちた。

 風の影響とは言え、後半浅い時間帯で自らのミスによる思わぬ失点。苦しい中で鹿島学園はそれまでのチームから脱皮を図る。常々、鈴木雅人監督は精神面での成長をチームに促してきた。「昨年、苦い思いをしてきた。それを糧に肉体的強化は勿論、精神的にもっと大人になって逞しくならなきゃダメなんだ」(鈴木監督・鹿島学園)。口癖のように選手を諭してきた言葉は土壇場でチームに根付いた。いつかくるであろうチャンスを待って、相手に攻め込まれても冷静に我慢を続け、47分、48分と菅沼、鈴木に際どいシュートを放たれてもGK安藤が踏ん張った。

 そんなチームにワンチャンスが巡って来る。55分、横山、椎名と繋いだボールが右サイドに開いた小原に渡る。その小原が上げたクロスをDFと競り合う榎本。頭でジャストミートしたというよりも肩口に当たったかに見えたボールは、GK伊藤が反応できないイレギュラーを起こしてゴールに転がり込んだ。

「あの同点弾はショックだった」(野崎監督・浦和東)と無念な気持ちを滲ませる。それでも浦和東の主導でゲームは動いていたはずだった。60分、三島が相手を引きつけ、スイッチした途中出場の田中が横にボールを流す。それを叩いた鈴木のシュートは左ポストに阻まれる不運。またCKなど、何度もセットプレーの機会がありながら、攻め手を欠いてゴールを決められない。

 そのピンチを逆に鹿島学園はチャンスに変えた。62分、相手CKから一挙にカウンター攻撃に打って出る。小原が送った縦パスを受けた佐々木は1人で浦和東にゴール前に乗り込むと、フェイントで相手をかわして浦和東の援軍が駆け付ける前にフィニッシュ。左サイドネットに刺さったゴールを見届けると鹿島学園イレブンに歓びが溢れる。終盤は浦和東の攻撃を受けるも一丸となったチームは揺らぐことはなく、リードを守り切った。



 浦和東はこのチームを立ち上げて以来、過去に逆転負けを喰らったのはただ1回。そういうことでは畳み掛ける2点目が取れなかったことが敗因だろう。「セットプレーあれほどあって、練習したのにも拘らずそこから点が取れなかった」と、野崎監督は日頃の成果が出なかったことを悔やむ。それだけでなく、1、2回戦でもゲーム運びが浦和東らしくない部分はかいま見られた。上位進出も見込まれていた浦和東にして全国の大舞台で常日頃のプレーを続けることの難しさ。見る側としても改めてそれを感じさせられた。

 なかなか相手ゴールに迫れない状況で、ゲームをひっくり返した鹿島学園。風上にいた前半の闘い方には課題は残るも、風下の不利な条件下では信条の粘り強いプレーで勝利にをモノにした。それも選手達はただ「頑張る」という地点から「頑張り続ける」という継続的な忍耐力を示すチームへ。わずか1試合の中にあったチームの変化を何よりも喜んでいた鈴木監督。その姿を私はずっと忘れることはないだろう。





(鹿島学園高校) (埼玉県立浦和東高校)
GK: 安藤恭平 GK: 伊藤謙
DF: 椎名拓也 平野泰之 後藤大地 竹内裕也 DF: 秋葉淳平 若海純 小森隆生 中川周
MF: 横山将為 小原秀一 平山正樹 榎本有真(71分/小玉泰輔) MF: 三島康平 菅沼守 石塚悠幾 横川健太(78分/山ア雄一)
FW: 佐々木竜太 眞家巧 FW: 渡邊大貴(57分/田中洋兵) 鈴木寛一
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