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  私の中の日本代表 <前へ次へindexへ>
2002world.com特別企画「私の中の日本代表」
「サポーターとともに」。日本、13年ぶりにアウェイで韓国を破る。
プレイバック1998フランスW杯アジア最終予選Bグループ 第7戦 韓国代表vs.日本代表

1997年11月1日(土)15:00 蚕室五輪競技場(ソウル) 観衆/75,000人
試合結果/韓国代表0−2日本代表(前0−2、後0−0)
得点経過/[日本]名波(1分)、呂比須(37分)


文/中倉一志

 75,000人の満員の観衆で埋め尽くされたソウル・蚕室五輪競技場。オーロラビジョンに映し出されるスタンドは、赤と青できれいに色分けされている。赤い韓国サポーターの数は60,000。ゴール裏に陣取る「レツド・デビル」を中心にして、熱い応援が繰り広げられている。そして場内放送も、派手な音楽と熱の入ったハングル語で韓国サポーターを盛り上げている。既にW杯出場権を獲得しているとはいえ、今日の相手は宿敵日本。加えて、ホームゲーム最終戦とあれば、何としても負けるわけにはいかない、そんな気持ちがありありと伝わって来る。

 試合前には、日本と一緒にフランスへ行くため、手心を加えるべきとの論争が持ち上がったそうだが、そんな発想はスポーツを知らない人たちのもの。スタジアムに集まった韓国サポーターたちは、正々堂々とした戦いを望んでいる。日本にとってもありがたいことだ。正々堂々と韓国を破ってこそ、意味のある戦いになる。

 対する青の日本は15,000。数の上で完全に圧倒されている。しかし、熱の入った応援は、韓国に優るとも劣らない。代表の試合ではすっかりお馴染みになったウルトラスを中心に、大小様々なツアーを利用してやって来たサポーターたちが、声の限りに声援を送っている。その迫力は凄まじい。数の上では、わずか四分の一でしかないのだが、日本サポーターの発する声援は、韓国の応援にかき消されるどころか、時として、韓国サポーターを上回るほどの大きさだ。「いま応援しなければ、いつ応援するのだ」「いまこそ12番目の選手としての力の見せ所だ」。15,000人のサポーター全員が、そう思っている。



 FIFAアンセムに乗って、両国代表イレブンが入場して来る。韓国の布陣は、前回同様3−6−1。守備の要であるホン・ミョンボを累積イエローで欠いているものの、ほぼベストの布陣。怪我のため出場が危ぶまれていたチェ・ヨンスも健在だ。対する日本は4−4−2。前日の某スポーツ新聞では、守備を固めて最少得点で逃げ切るという戦術予想が出ていたが、今日は山口のワンボランチ。岡田監督は真っ向から勝負を挑むようだ。

 今まで聞いたことのない、身震いするような君が代の大合唱の後、選手たちはピッチに散っていく。いつものように円陣を組む日本。やるだけのことはやった。後は結果を出すだけだ。その表情はそう語っているかのようだ。ゴール裏のサポーターたちの声援も、いっそう大きくなって来る。

 自分たちの力を信じて精一杯戦って欲しい。どんなことがあっても最後まで代表を支え続ける。だから、自分たちのすべてを出して戦って欲しい。そんな想いが痛いほど伝わって来る。そんなサポーターの声援は、今までのどんな試合よりも熱い声援となって、イレブンの背中に投げかけられている。目指すは韓国ゴール。そして勝利の2文字。沸き上がるニッポンコールの中、いよいよ試合開始のホイッスルが鳴った。



 W杯出場のためには、もう1敗も許されない日本。ホイッスルと同時に、全員が前へ向かって飛び出していく。そして、誰もが思いもよらぬ時間に先制点をたたき出した。名波のパスを受けた相馬が左サイド深くに入り込む。ハーフライナー気味に上げたセンタリングに呂比須、カズが飛び込んで来る。あわててマンツーマンでついていく韓国DF。その時、呂比須がボールを後方にスルー。そこには、フリーになった名波が待ち構えていた。あとはゴールに向かってボールを蹴り込むだけだった。

 だれかれかまわず、抱き合って喜ぶサポーターたち。唖然とする韓国イレブン。ホイッスルが鳴ってから1分後の出来事だった。その後も、日本は攻撃の手をゆるめない。カズが、呂比須が、北沢が、そして中田が、次から次へと韓国ゴールを襲う。開始10分頃までは、何とか反撃を試みていた韓国も、その後は日本の攻撃の前に防戦一方だ。



 前線から積極的にボールを追いかけるカズと呂比須。高い位置でのプレスでボールをことごとく奪う中盤。相馬、名良橋の両サイドバックの積極的な攻撃参加。北沢の豊富な運動量のおかげで出来たスペースを使って、自由にボールを操る中田と名波。最終ラインを的確にコントロールする井原。そして制空権を完全に握る秋田。あの強い日本が帰ってきたのだ。そんな日本が追加点を奪うのは時間の問題だった。そして36分、再び相馬が左サイドを突破。ペナルティエリア内に侵入しゴール前にボールを折り返すと、軽々と呂比須が追加点をゲットした。

 前半を2−0で折り返した日本。更に追加点を狙って攻撃の手をゆるめない。だが、過去何度となく日本の前に立ちはだかった赤い壁は、簡単には崩れなかった。55分をすぎた辺りから、韓国は怒涛の反撃を開始したのだ。日本の動きがやや鈍くなったことも手伝って、ボールを支配する韓国は、再三日本ゴールに襲いかかる。日本はピンチの連続だ。

 しかし、日本は、このピンチを全員の集中力ある守備で跳ね返していく。サポーターの声援も更に大きくなっていく。ピッチで戦うイレブンと、それを支えるサポーターの声。グランドとスタンドが一体となって戦う日本の壁は厚く、韓国はその壁を崩すことが出来ずに時間だけが過ぎていく。そして80分。韓国に退場者が出て日本の勝利が確定的になった。韓国陣内で、ゆっくりとボールを回す日本。パスがつながるたびに「オーレ!オーレ!」の大声援が、日本サポーター席から沸き上がる。そして、時計の針は遂に90分を指した。



 日本は土壇場で韓国を破り、W杯への望みをつないだ。敵地ソウルで韓国を破ったのは13年ぶり。2点差をつけて完封した試合は、実に41年ぶりの快挙だ。全員が戦う意志を持って、いたるところで勝負していた。どんな局面でも、慌てず、ひるまず、前向きに戦っていた。その気迫たるや凄まじいの一言だった。何しろ、あの驚異的なスタミナをもつ韓国選手たちが、次から次へと倒れていったのだ。しかし、日本イレブンは誰もピッチに倒れ込むことはなかった。こんなに逞しい日本は、正直言って見たことがなかった。そんな戦う気持ちこそが、今日の勝利の要因と言っていいだろう。

 そして、忘れてならないのが、日本からやってきた15,000人のサポーター。日本のW杯出場の可能性が危うくなったせいもあって、ツアーのキャンセルが出るのではと危惧されていたが、キャンセルはほとんどでなかったと聞く。可能性がある限り、いや、今日、韓国に訪れたサポーターたちは、可能性があろうとなかろうと、代表が戦う気持ちを持っている限り、代表の応援に駆けつけたはずだ。代表を愛し、代表を信じ、そして彼らをサポートするためには、どんな苦労もいとわない。そんな本物のサポーターが蚕室五輪競技場にはいた。彼らの想いが、そして彼らの声援が、日本代表に力を与えたのは間違いない。

 韓国戦の翌日、UAEがウズベキスタンと引分け、再び、日本の自力2位の道が復活した。今まで不甲斐ない戦いで、何度となくチャンスを逃してきた日本であるが、今度こそは、このチャンスを掴まなければならない。選手も、代表スタッフも、そしてサポーターも、ここからが本当の勝負だ。W杯出場まで、あと2勝。フランスの灯はもう目の前に見えている。がんばれ日本!!


※このレポートは、筆者がアマチュア時代に「online magazine 2002japan サポーター観戦記」に掲載されたものを加筆・修正したものです。
(韓国代表) (日本代表)
GK: キム・ビョンジ GK: 川口能活
DF: イ・ミンソン チャン・デイル、チェ・ヨンイル DF: 名良橋晃、秋田豊 井原正巳、相馬直樹
MF: イ・ギヒョン、キム・ギドン、ユ・サンチョル、ハ・ソッチュ、ソ・ジョンウォン(60分/ノ・サンレ)、コ・ジョンウォン(46分/イ・サンユン) MF: 山口素弘、中田英寿、名波浩 北沢豪(70分/平野孝)
FW: チェ・ヨンス(44分/キム・ドフン) FW: 呂比須ワグナー、三浦知義
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