topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 第25回全日本女子サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
チームメイト、家族、そして同級生の声援を受ける神奈川大学の選手たち。
80分間のレッスン。田崎に学んだ神奈川大学。
第25回全日本女子サッカー選手権大会 2回戦 田崎ペルーレFC vs.神奈川大学女子サッカー部

2004年1月12日(月・祝)11:00キックオフ 日本平スタジアム 観衆:186人 天候:曇
試合結果/田崎ペルーレFC5−0神奈川大学女子サッカー部(前半4−0、後半1−0)
得点経過/[田崎]甲斐(7分)、柳田(14分)、山本(35分)、鈴木(39分、46分)


取材・文/西森彰

「ようやく他人様にお見せできるようなサッカーになってきました」。念願のL・リーグ優勝を決めた最終節、田崎ペルーレFCの仲井昇監督は笑顔で話してくれた。

 このチームの初タイトルは4年前の第21回全日本女子サッカー選手権大会。プリマハムFCくノ一(現・伊賀FCくノ一)の攻撃にさらされ続け、いつ失点してもおかしくない展開だったが、延長戦までスコアレスドローで凌ぎきり、PK戦で勝ち名乗りを受けた。「優勝をしたのは嬉しかったけれど、正直『見に来てください』と胸を張って言える内容のサッカーじゃありませんでした」と仲井監督は当時を振り返った。

 そんなチームはこの初タイトルで自信をつけ、ここから4年連続で決勝に進出している。リーグ戦でも昨年、初優勝を飾り、名実ともに日本女子サッカー界の目標としてお手本になるチームになった。休日にもキッズ・サッカー・プロジェクトの一環として、淡路島の幼稚園などにも足を伸ばして先生役を務めることもある彼女たち。この日の生徒は、Honda FCを降して受講証を得た神奈川大学女子サッカー部だ。



 肉離れからの回復途上にある大谷未央をベンチからも外した田崎だったが、エースを欠いてもガクッと力が落ちないほど、現在の力は充実している。神奈川大学はダブルボランチに稲葉彩衣里と日本代表の矢野喬子、そしてワイパー役を兼ねたストッパーとして百武江梨を置き、中央の守備は分厚く、そして堅い。そこで田崎は右サイドのスペースにボールを送って、これをウイングの土橋優貴に狙わせた。サイドハーフの後ろ、最終ラインの脇を狙われた神奈川大学はパニックに陥った。

 7分、柳田美幸の蹴った左コーナーキックに甲斐潤子が得意のヘディングシュートをあわせて先制点を奪うと、14分にも土橋の俊足を生かした右サイドからの折り返しで2点目。35分にもゴールキーパー・秋山智美からのフィードを鈴木智子が競り勝ってキープ、フォローした山本絵美が詰めて3点目。39分にも甲斐のフリーキックを川上直子が頭で落とし、これを鈴木がドリブルで持ち込んだ後にシュート。前半終了時点で田崎は4点を刻んでいた。

「『後半はもっとやられるんじゃないか』と思いました」と前半のダメージを心配していた神奈川大学の鎌田俊司監督。「いつものようにきちんとプレスを仕掛けてみよう。裏を狙われてもズルズルと下がるのではなく、勇気を持ってラインを高く保とう。決して逃げるな」。酷だとは思いながらもハーフタイムに要求した指揮官だったが、教え子たちは逞しかった。後半からは完全に体勢を立て直したのである。

 田崎は、47分にも鈴木がゴールを奪い、勝敗を決した。その後は、出場機会の少ない選手たちをピッチに送り出し、ケガや警告の可能性を宿す強引なプレーを避けた。しかし、そういった相手の事情を差し引いても、後半の神奈川大学のプレーからは粘りが感じられた。

 連続する相手のコーナーキックではクロス、セカンドボールを自由にさせず、きっちりと封じ込んだ。相手がシュート体勢に入るとディフェンダーが体を張り、限定されたコースに飛ぶシュートは、きっちりと渋江美紗子がセーブする。前半と後半の比較では、失点が4と1、被シュート数は17対7。放ったシュートこそ、前半11分の小林菜摘の1本だけだったが、若い選手たちはゲームの中で成長を見せた。



「選手を褒めてあげても良いんじゃありませんか?」。試合終了後、鎌田監督にそう声をかけた。指揮官も笑顔を見せている。「そうですね。さすがに『いっぱいいっぱい』でしたが、彼女たちは自分たちが出せる力を100%、いやひょっとすると120%出してくれたと思います。逃げずに戦ってくれた。それが嬉しいです」。きちんと全員で後ろからビルドアップしていく。「これが神奈川大学のサッカー」というメッセージが、2日間、ピッチから発散されていた。

「今日、田崎さんと試合をできたことで、選手たちの意識がまた上がると思います。口で言ってもなかなか分からない部分を、今日は勉強できたと思います」と、女王へ感謝の言葉を捧げた後、鎌田監督はこう続けた。「シュートはもっと打ちたかったし、できれば得点も取りたかった。でも、まだ若いチームですから、この先が楽しみです」。創部3年目のこのチームは1、2年生が主体だ。まだまだ伸びシロは十分に残されている。



 大学生に80分間の手ほどきを終えた二冠女王・田崎は、準々決勝でスペランツァF.C.高槻と対戦する。「高槻は嫌な相手ですよ。ウチは全日本で当たるとすぐ『点取れない病』になっちゃうんだから」と仲井監督は警戒を怠らない。さて、大谷を欠く田崎は、曲者をどう攻略するのか。さいたま市駒場スタジアムで18日(日)の11時ちょうどにキックオフされる。


(田崎ペルーレFC) (神奈川大学女子サッカー部)
GK: 秋山智美 GK: 渋江美紗子
DF: 磯崎浩美、白鳥綾、甲斐潤子 DF: 横山起永、住江真祐子、百武江梨、杉田香
MF: 土橋優貴、川上直子、新甫まどか、佐野弘子 MF: 稲葉彩衣里、矢野喬子、鈴木麻友、福田沙矢香
FW: 柳田美幸、鈴木智子、山本絵美 FW: 林田美由紀(40分/堀田えり子)、小林菜摘(66分/薮崎愛)
<前へ次へindexへ>
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送