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 webnews 04/11/14 (日) <前へ次へindexへ>
コンディション不良の新潟、湘南に名を成さしめる。
第84回天皇杯全日本サッカー選手権大会 4回戦 湘南ベルマーレvs.アルビレックス新潟

2004年11月13日(土)18:31キックオフ 平塚競技場 観衆:3,195人 天候:曇り
試合結果/湘南ベルマーレ3−2アルビレックス新潟(前1−1、後2−1)
得点経過/[新潟]寺川(7分)、[湘南]佐野(44分、49分)、[新潟]上野(60分)、[湘南]坂本(65分)


取材・文/西森彰

「頑張れ、新潟!」

 試合開始を前にして湘南ベルマーレのファンが、新潟サイドにエールを送り、横断幕を広げる。さらに、選手入場後、湘南ベルマーレのホームタウン下の子供たちが一つ一つにメッセージを書き込んだ折鶴がアルビレックス新潟の選手たちに手渡され、「がんばろう!新潟」の看板を前にして、両チームの記念撮影が行なわれる。ビッグスワンで開催が予定されていたこのゲームも平塚競技場でのナイターへと振り替えられた。それでも、ホームチーム以上の声援を送るオレンジのファンが足を運んだ。

「新潟から関東へ来るのもアクセスが非常に難しくなっている状況ですけれど、それにも関わらず、たくさん集まっていただいて、感謝しています。『一緒に戦って頑張っていこう』という気持ちは強いです」(反町康治監督・新潟)



 ファンの気持ちに応えたい。ここ最近のゲームとは見違えるように、気持ちの入った立ち上がりを見せる新潟は、7分という浅い時間帯に、早くも先制点を奪う。上野優作から、左サイドのスペースをついた鈴木慎吾。鈴木のセンタリングがファーへと流れたが、これを良くフォローした寺川能人が素晴らしいシュートを湘南のゴールに突き刺した。

 その後も、一方的な新潟ペースが続き、湘南は攻撃のシーンがほとんど見られない。DFにケガ人が続出し、急造DFを多く起用せざるを得ない状況だが、彼らの寄せとマークの受け渡しが今一歩遅く、新潟の3トップに制圧されてしまっている。仕方なく、中盤の選手が下がると、ボールを左右に動かしながら、これをかく乱。30分過ぎまでは、新潟が何点奪うかが焦点になりそうだった。

 しかし、ひとつのプレーがゲームの流れを変えた。前半も残り僅かというところで、それまで見殺しにされてきた加藤大志のオーバーラップに合わせてボールが送られる。右サイドを駆け上がった加藤は、新潟守備陣の制空権外へ絶妙のセンタリング。柿本倫明のヘディングは弾き返されたが、これを佐野裕哉が良く詰めた。サイドバックの攻撃参加が実を結び、湘南は蘇生した。



「(疲労やコンディションの問題は)勝てば『ない』って言うんですが、負ければ『ある』って言いたくなる。それは言い訳にも何にもならないと思います。ただ、リズムがうまくできないっていうことに関しては、やっぱりそれは間違いなくある」(反町監督)。試合内容から考えると3−0でもおかしくない前半をタイスコアで終えてしまった。中2日のゲームで、勝利を決め損ねたダメージは大きかった。

 逆に湘南は49分、ゴール正面でボールを受けた佐野が、体を反転させながら、スーパーシュートを新潟ゴールに叩き込んで逆転。さらに勢いは加速する。守備に追われていた攻撃陣は、相手のペースダウンによって周りが見えてきた。さらに、選手たちが自主的に位置取りを変えることで、新潟のマークにズレを生じさせる。ポジションチェンジで混乱した新潟の選手を縫うように、スピーディーにボールを前へ運んでいった。

「前半はボールを奪った後、前や中盤の選手の足が止まっていた。そこで何とか流れを変えようとポジションチェンジをしてみたんですよ。それが得点につながって追いつきたい時に追いつけたんです。僕が右サイドに出ても、右サイドの高田さんがボランチに入っても、お互いにやることが分かっていますから。誰かが出たら、誰かが埋めるという約束事ができているんで」(吉野智行・湘南)

 新潟もさすがにそのままでは終わらなかった。強行日程の中で劣勢に追い込まれても、易々と試合を投げ出さなかった。「責任が私にあるだけであって、選手には全く責任はありません。最後まで一所懸命に1点を追いつくためにやった」と、指揮官が選手たちを手放しで讃えたように、懸命に反撃の糸口を探った。セカンドボールをことごとく拾って続けた波状攻撃で奪った上野の同点ゴールは、その象徴だった。

 だが、その同点劇も束の間のこと。5分後、吉野のボールを受けた坂本がペナルティボックスに入る辺りから、強烈なシュートで3点目を奪う。「やはりフィニッシュが3つ決まったというのは大きいと思いますね。選手たちはその点で高く意識を持ってやっているので、結果が出たのは良かったと思います」(上田栄治監督・湘南)。これまで得点力不足に悩み、接戦で白星を掴めなかったチームが、J1を相手に3得点で「対プロ初勝利(笑)」(上田監督)を挙げた。



「今日は、前のゲームに比べますと、選手の戦う姿勢ですとか、自分たちで何とかしてあげようという積極性。そういう意味では、まあ結果は伴いませんでしたけれども、非常に僕は満足している」

 反町監督が語ったように、新潟は諸条件を考慮すれば良く戦ったと言える。惜しむらくはハーフコートゲームにしていた前半で試合を決められなかったこと。2点目を早めに奪っていれば、勝利を手にしていたことは想像に難くない。しかし、重くなる体を支えながら、懸命に前を向き、タイムアップの瞬間まで同点ゴールを目指した姿勢は、評価されて良いだろう。

 J1残留を当確させ、カップ戦はこれで終了。目標を失ったチームの建て直しをどこまでできるかが、反町監督の腕の見せ所だ。今後は「リーグをあと3試合、それと日本代表に勝つという目標もありますんで。良い形でシーズンを終えること。新潟の県民に力を与えることだと思います」。待望のホームゲームとなる11月20日(土)のFC東京戦で、素晴らしい結果を出したいところだ。



 師走の声が聞こえてくるたびに、ポテンシャルを発揮する湘南だが、それだけの力を持っていながら、シーズン開始でコケると後はズルズル。この失敗を幾たびも繰り返してきた。試合後の記者会見でも上田監督は「今日、勝てたのは『相手がベストではなかった。だけど我々はベストを尽くした』というところが良かったのであって、完勝できたのではありませんから。そのへんを勘違いしないでいきたいです」と兜の緒を締めた。

「今まで積み重ねてきたことの結果が、今日は出た。上田さんが来て、ひとつの方向性を示してくれた。だから、今は誰がどこのポジションに入っても変わらないプレーができる。大げさに言えば、メンバーに入っていない選手が『じゃあ、ここをやりなさい』って言われてもできるようになっていると思うんですよ、今は。そのことを変わらずに、ずっとやり続けることですね」(吉野)

 吉野が語っているように、選手も次シーズンへの継続を意識しながらプレーを続けている。まず、選手をシステムに当てはめて、その中で個性を生かす上田采配。選手が戦術を理解し、納得してプレーすることが成功の必要最低条件となる。吉野のコメントを聞く限り、まだチーム内に不協和音は出ていない。「結果よりも内容」と口にする上田監督だが、長く低迷を続けるチームを支えるファンや、プレーする選手たちは、目の前の結果を手にして自信を深めたい。その意味でも大きな勝利だった。



 ここから先は自分たちだけの戦いではなくなる。反町監督が現役時代に、ベルマーレ平塚(現湘南)の契約担当として金額交渉をしていたのが上田監督。3日前、新潟と柏レイソルの試合を視察した後で「『見に来てました?』『見てました』と。その程度」(上田監督)を電話で話した間柄である。だからこそ、記者会見の冒頭に上田監督の唇をついて出た。

「今日は新潟のほうが過密日程ですし、ベストメンバーではありませんし、そういう意味では悔しい思いをしたんじゃないかと思います。私たちは今後、天皇杯で、新潟の分も頑張っていきたいと思います」

 それが本当の「頑張れ、新潟」だ。


反町康治監督(アルビレックス新潟)記者会見
上田栄治監督(湘南ベルマーレ)記者会見


(湘南ベルマーレ) (アルビレックス新潟)
GK: 鈴木正人 GK: 野澤洋輔
DF: 加藤大志、 戸田賢良、浮氣哲郎、北出勉 DF: 丸山良明、喜多靖(85分/船越優蔵)、松尾直人
MF: 高田保則、中町公祐、 吉野智行、坂本紘司 MF: 寺川能人、本間勲(70分/栗原圭介)、安英学、鈴木健太郎
FW: 佐野裕哉(78分/アマラオ)、柿本倫明 FW: エジミウソン、上野優作、鈴木慎吾(70分/ホベルト)
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