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 webnews 05/12/28 (水) <前へ次へindexへ>
前半の好勝負が一転、退場者を出した川崎を浦和が一蹴す
第85回天皇杯全日本サッカー選手権大会 準々決勝 浦和レッズvs川崎フロンターレ

2005年12月24日(土) 13:03キックオフ 埼玉スタジアム2002 観衆:27.589人 天候:晴
試合結果/浦和レッズ2ー0川崎フロンターレ(前0−0、後2−0)
試合経過/[浦和]マリッチ(68分)、堀之内(83分)


取材・文/砂畑 恵

 川崎サポーターは5回戦が終わった長崎のスタジアムで、「リベンジ」と唱えていたと聞く。準々決勝で対戦するは浦和。今期リーグ戦では1分1敗だが、そこには単なる記録では測れない川崎ならではの苦い記憶がある。第2節では手中に収めたはずのJ1復帰初勝利を終了直前に打ち砕だかれ、第29節では立ち上がりの2失点から得点を重ね、佐原のヘッドで大逆転と思われたもののゴール取り消しにあい、その後の失点で連勝記録も6でストップされた。だからこそ、その相手に勝って国立へ名乗りを上げたいというわけだ。

 対する浦和とてここで負ける訳にはいかない。昨年はJリーグ開幕以来、最高と言える戦績を残した。それでもステージ優勝をしたとは言え、チャンピオンシップ、ナビスコ杯、そして天皇杯といずれのタイトルもその手からすり抜けた。そして、未だ無冠の今シーズン、最後の天皇杯では是が非でも頂上に立ちたいとの強い欲求がある。



 そんな夫々の思惑を乗せゲームは始まる。ペナルティーエリア内に相手を侵入させない堅い守備と策を弄してそれを崩そうとする攻撃陣。ボールがピッチ狭しと駆け巡り、目まぐるしく攻守の入れ替わる展開。そういった試合は時の流れを速く感じさせる。

 最初に決定的シーンを作ったのは川崎。20分、左サイドからの攻撃だった。この日の浦和は右ストッパーに細貝。粘り強くプレーをしてはいたが本職のポジションではない。相馬はパスを受けると対面する岡野が寄せてくると見るや縦にボールを走らせ、細貝の守備エリアを突く。ボール反応したフッキと細貝の1対1。フッキは力で押し破るとゴール前にボールを流し込んだ。ニアには我那覇、ファーにはマルクスがいたがどちらにも合わず。

 その3分後、今度は浦和にチャンスが到来する。それまで川崎の集散の早い守備に中盤でボールを失う事も多かった浦和だが、ポンテが自陣中央からスペースのある右サイドにボールを持ち出しするすると上がると、足を出す伊藤を飛び越え大きくカーブを掛けたクロスを放った。ファーでフリーになっていたマリッチがダイレクトでシュートを叩き出すが、ゴールの枠を捉え切れない。

 お互い絶好機を決められず、一進一退のゲームが続く場合、2列目以降の選手がゴール前に飛び出してくることが鍵となることは多い。この試合でもそういう場面はあった。川崎が37分、ドリブルで中央にボールを持ち込んだアウトサイドの森が、そのまま伊藤のクロスに飛び込んで決定機を作り、浦和も43分、相手ボールをカットした鈴木がポンテとのワンツーからシュートにこぎ着ける。だが残念ながら双方ともゴールには繋がらなかった。



「両チームともお互いの持ち味を出した」と双方の監督が共に讃えた攻防は、前半のロスタイムに風雲急を告げる。森が2枚目のイエローを受け退場。これにより川崎は相馬を1つ下げ4バックに移行。中盤は3人にして守備を強化し、数少ないチャンスを待つ戦術を取る。関塚監督はマルクスに代えて左利きの原田を投入し、セットプレーにも備えた。

 ゲームを支配下に収めた浦和は長谷部を起点に岡野らが積極的に前に出て川崎陣内に攻め込んだ。しかし7人で守る川崎の牙城を突き崩すことに腐心。それは後半になってシュートらしいシュートは2本に、68分までCKがなかったことでも伺い知れる。だがそのCKを得点に結び付けた。ポンテのキックに対し堀之内が相馬を引き付けニアに動く。その横で箕輪のマークを受けていたマリッチも堀之内と同じ方向に走る。だが箕輪の視界からすっと外れると瞬時に後退。フリーになったマリッチは頭でゴールを叩き込んだ。

 先制した浦和はブッフバルト監督の「ボールを繋いで行こう」という指示を受け、パスを回して相手を焦らす戦法に切り替え、更には83分、CKからのこぼれを拾った岡野が間髪入れずに上げたクロスに堀之内が見事なヘッドを炸裂させて2点目。85分過ぎからは前に出てきた中村が起点となる川崎の反撃にあったが、それを凌ぎ切って準決勝へと駒を進めた。



 退場者もあり川崎には難しい試合だったが、85分からの攻撃が良かっただけに、もっと早くに中村をはじめ中盤が勇気を持って前へ押し上げられなかったことが悔やまれる。ただ今シーズン全般を振り返ると昇格した年としてはまずまずの1年だったのではないだろうか。攻守のバランスは取れ、一時は首位に迫る勢いもあった。来年はこれをベースにして、「いい勝負で終わらないしたたかさ」を備えるようステップアップを図りたい。

 浦和に関しては特に前半は、先に記した鈴木のプレーのようにゴール前に飛び込む動きが足りなかったことは課題だ。そして今1つ言うなら、何としてもタイトルが欲しければ相手に嫌悪される程、もっと「どん欲」で「執着」する気持ちをプレーに滲ませて欲しい。




関塚隆(川崎フロンターレ)記者会見
ブッフバルト監督(浦和レッズ)記者会見


(浦和レッズ) (川崎フロンターレ)
GK: 山岸範宏 GK: 相澤貴志
DF: 坪井慶介 堀之内聖 細貝萌 DF: 箕輪義信 寺田周平 伊藤宏樹
MF: 山田暢久 鈴木啓太 長谷部誠 三都主アレサンドロ ポンテ MF: 森勇介(44分/退場) 中村憲剛 相馬直樹 谷口博之(76分/長橋康弘) マルクス(HT/原田拓)
FW: 岡野雅行 マリッチ FW: フッキ 我那覇和樹(82分/黒津勝)
SUB: 加藤順大 酒井友之 赤星貴文 横山拓也 エスクデロ SUB: 下川誠吾 佐原秀樹
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