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 福岡通信 05/06/29 (水) <前へ次へindexへ>

 最後のピースは「勝者のメンタリティ」
 

 取材・文/中倉一志
 いつになったら目を覚ますのか。試合を取材するたびにそんな思いを強くする。勝てない今は我慢の時。そう思ってチームを見てきたが、それにしても変化がなさ過ぎる。有利に進める試合を勝ちきれず、不用意な失点を喫する。過去2年間の中で様々な経験を積んできたはずなのに、今年も同じことを繰り返す姿には、さすがに言葉を失う。結果にこだわるはずのシーズンが、いつの間にか内容にこだわるようになり、そして、その内容さえ悪くなってきている。

 上昇のきっかけがなかったわけではない。最初は第6節の草津、第7節の横浜FCと2連勝した時。そして2度目が、14節の仙台、15節の湘南に2連勝した時期だ。ところが、第8節の札幌戦ではロスタイムにゴールを奪われて勝ち点2を失った。問題は引き分けたことよりも、その戦い方。試合後、松田監督は「あのまま勝っていたら非常にラッキーな試合だった」と発言したが、連携もなく、集中力に欠いた試合は負けに等しい内容だった。

 そして第17節の札幌戦。前節に京都に敗れて連勝は途切れていたが、内容では京都を凌駕する戦いぶりを見せ、流れはいい方向に向いていた。ところが、ここでも目を疑うような試合を展開、なす術もなく札幌の前に敗れた。グラウシオ、ホベルト、アレックスの欠場の影響があったことは否めない。しかし、それ以前の問題だった。組織のバランスの良さが身上のチームの姿は見られなかった。

 2試合とも、きちんと準備をして、「目の前の試合を必ず勝つ」という意思で臨んだはずの試合。しかも、それぞれの試合がチームにとって大切な意味を持つことを監督、選手ともに理解していた試合。にもかかわらず、福岡の生命線とも言えるディシプリンを立ち上がりから欠き、そして勝ち点を失った。それぞれの試合にあったチャンスをきちんと決めておけば、違った結果になったという見方もあるだろう。しかし、それ以前に、チームのベースを見失ったことが大きな問題だった。



 そんな中で迎えた第18節の水戸戦。デルリスを1トップに置く4−1−4−1の布陣の水戸は、少し引いた位置から、福岡が前に出てくるところを捕まえてカウンターを仕掛けるのが狙い。福岡にとっては、我慢強くボールを回して相手の守備を分散し、出来たスペースを確実に突くことがポイントだった。しかし、アグレッシブなプレーを続ける水戸の前に福岡は自分たちを見失う。そして、分かっていながら水戸のサッカーにはまり込んだ。

「前半は後手後手になり、焦ってしまって落ち着いて出来なかった」(千代反田)。水戸のプレスの前にボールがつなげず、ミスや不用意な縦パスを奪われてカウンター攻撃にさらされる。バランスを失ったチームは守備も安定せず、全く相手を捕まえられない。18分にはグラウシオがGKとの1対1の場面を作ったが、これをGK本間に防がれると、これ以外に1本のシュートも打てなかった。水戸の前に防戦一方に追いやられた45分間。0−0で折り返せたのは、むしろラッキーだった。

「相手の裏のスペースを攻撃の起点にしろ」(松田監督)。パスがつなげない福岡は、長めのボールを蹴って流れを変えにかかる。しかし、セカンドボールへの対応も、スペースへの動き出しも水戸が上。前半と比較すれば前へ出る機会が増えたとはいえ、ゲームの流れを掴んでいたのは水戸だった。63分、川島に代えて太田を投入。松下を右SBに、中盤をダイヤモンドにして主導権を奪いにいったが、この交代は水戸には予想通り。水戸は3−4−3に布陣を代えて、福岡にペースを渡さない。

 79分、グラウシオから前線へ飛び出していった宮崎に。そして宮崎が中央へ折り返して太田が滑り込んだ。しかし、この決定的なチャンスに太田はボールをゴールポストの外へ弾き出す。そしてここからは再び水戸が猛攻。DFラインの頑張りと、水戸の最後の詰めに欠くプレーに救われてゴールを奪われることはなかったが、試合の流れは後半も水戸の狙い通り。最終的にスコアレスドローの結果も、どちらが上位チームか分からない試合内容だった。



 この試合でも福岡は自分たちのサッカーが出来なかった。もちろん、水戸がアグレッシブな姿勢を見せたことも影響しているが、それにしてもの思いが強い。確かに、昨年以上に実力が拮抗しているJ2は簡単なリーグではなく、どのチームも勝利を目指して戦う中では、どんな相手と戦っても簡単な試合などはないものだ。だが、そんな流れに飲み込まれて自分たちのサッカーが出来なくなってしまうようならJ1昇格はおぼつかない。

 福岡が志向する組織サッカーに間違いはない。それは、過去2年間、4位、3位と順位を上げてきたことが証明している。そして、過去2年間で見せた終盤の驚異的な勝率は、自分たちのサッカーさえ出来れば、相手にかかわりなく勝ちを重ねられることを実証したものだ。また、どんなに悪い試合をしても、ここまで3敗しかしていないという事実は、他のチームと比べればベースの部分で上を行っていることの証でもある。

 ではなぜ勝てないのか。実力が高いレベルで拮抗するプロの世界では、互いの差は目に見えるほどにハッキリとは現れない。また、お互いが高いレベルに達すれば達するほど相手の特徴を消し合うことになり、目が覚めるようなスーパープレーが生まれる機会は減る。そういう中では、ほんのわずかな差を維持し続ける精神的な強さと、どんな状況に追い込まれても自分たちの戦い方を信じられる自信と、わずかな隙を見逃さない嗅覚の鋭さだけが勝負を分ける。残念ながら今の福岡にはそれが足りない。

 表面上の問題となっている「決定力」の解消というだけなら、補強でカバーするということも効果的な手段だろう。しかし、補強は根本的な問題を解決するものではない。それは一時的には効果的に見えても、根本的な原因が解決しなければ、結局は同じことを繰り返す。それは過去の歴史を振り返れば誰にでも分かること。あれほどの存在感を示すグラウシオが、たった1人で切り込んでボールを奪われるシーンが目立つようになりつつあるのも、このことと無縁ではない。



 選手たちは間違いなく一生懸命に取り組んでいる。昨年の悔しさも忘れてはいないだろう。しかし、そんな気持ちや思いを形に表す術がまだ足りないということだ。厳しいことを言えば、だからこそJ2で戦うことを余儀なくされている。しかし、それは恥ずかしいことではない。そもそもJ1昇格レースとは、その力を身につけるための戦い。なければ手に入れればいいだけのこと。恥ずかしいのは、いつまでも同じことを繰り返すことだ。

 正直に言えば、過去2年間で積み重ねてきた経験と悔しい思いで、福岡は、いわば「勝者のメンタリティ」を手に入れたと思っていた。だからこそ、今年は作り上げた組織サッカーでJ2を駆け抜けるものと考えていた。選手の移籍の影響や、シーズン当初の怪我人の続出も、一時的には影響を与えるだろうが、それも時間の問題、ある一定の苦しい時を過ぎれば、それも解決するものと判断していた。しかし、足りないものが分かったいま、現実をしっかりと受け入れて、もう一度、「勝者のメンタリティ」を掴みにいくだけだ。

「自分たちを信じるというか、出来るんだということを前提に、あとはそこに気持ちをプラスして戦えれば大丈夫。萎縮することなく堂々と思いっきりやっていけばいいと思う」。水戸戦後、スタジアムを重苦しい雰囲気が包む中で、千代反田は私の問いかけに、そう応えてくれた。そして水谷は「監督どうのこうのじゃなくて、自分たちのせい。2連敗したのも自分たちのせいだし、現実を受け止めて、練習から意識を変えていかないといけないと思う。この引き分けをいい方向に持っていきたい」と言ってバスに乗り込んだ。

 行動を変えて、考え方を変えて、トレーニングに対する取り組み方を変えて、そうすることで見えなかったものが見えてくるはず。そうすることで、試合の結果も変わってくるはずだ。簡単なことではないかもしれない。しかし、それを手に入れたとき、J1昇格が現実のものになる。福岡に必要な最後のピース。全力を挙げて手に入れてもらいたい。


水戸vs.福岡の試合後の記者会見は、こちらからご覧になれます
松田浩監督(アビスパ福岡)記者会見
前田秀樹監督(水戸ホーリーホック)記者会見
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