topnewscolumnhistoryspecialf-cafeabout 2002wBBSmail tolink
 webnews 05/02/11 (金) <前へ次へindexへ>
課題もあり、手応えもあり
宮崎キャンプレポート その3

取材・文/中倉一志

 ところで、各クラブとも疲労が蓄積しているとき以外は午前と午後に分かれて2部練習を行っている。この間、3〜4時間ほどの時間が空くのだが、取材する側にとっては、この時間を潰すのが結構厄介な問題なのだ。トレーニングには最高の環境を提供している宮崎も、トレーニング施設内にはグラウンド以外にこれといった設備がない。取材陣が食事をしたり、デスクワークをする場所はなく、必然的に取材陣も一度グラウンドを離れなければならない。

 移動手段をバスと電車に頼っている私にとっては、交通の便が悪いという問題が更に降りかかる。シーガイアへ取材に行ったときは、グラウンドからテクテクと15分ほど歩いてバス停へ。しかしバスは1時間に2本。冷たい風が吹く中を、ここで20分ほど1人でバスを待つことになる。ようやくバスがやってきたときには、思わず「助かったあ〜」と口にした。しかし、寒ささえ我慢すれば(今年の宮崎は意外なほど寒い)、青く澄んだ空の下できれいな空気を吸ってのんびりと時間が潰せるのも宮崎にいるからこそ。この環境も悪くはない。



 さて7日、この日はシーガイア・エントランスプラザで札幌と福岡の試合が行われた。天気はあいにくの雨。まるで冬の雨のように冷たい。素晴らしい芝生が敷き詰められたエントランスプラザだが、スタンドはなく雨を凌ぐ場所はない。平日にも拘わらず地元のサッカーファンや、福岡からわざわざ観戦に訪れたサポーターは、フェンスの周りで雨に打たれながらの観戦を強いられた。私といえば、たった一つの施設である山小屋のような建物の中へと向かったが、入ってみると屋根がなく、結局雨に濡れながらメモを取ることになった。

 試合は45分×4本。実質的なトップチーム同士で行われた1、2本目のスコアは札幌の2−1。控組同士の対戦となった3、4本目は福岡が3−1で勝利した(「福岡通信:思い通りにはならなかった札幌戦」)。なんとなく試合を進めていた福岡に対し、札幌のアグレッシブな姿勢が目立った試合だった。札幌は4日に行った川崎Fの試合では連携も取れず、ミスも多く課題が山積みに思えたが、しっかりと課題を整理して福岡との試合に臨めたようだ。

 札幌の攻撃は、基本的には早めに高い位置にボールを送り込んでサイドから押し上げるというもの。福岡の両サイドの裏へ正確なロングボールを送り込んでチャンスを作った。福岡が後手を踏んだのは、札幌の攻撃を受けてしまい徐々に後ろに下げられて中盤が間延びしたから。2失点後、運動量が落ちた札幌に対し、アグレッシブに前に出て一方的に試合の主導権を握ったが、古賀の直接FKによる1点しか返すことが出来なかった。


 翌8日は再びシーガイアへ。この日は広島の宮崎キャンプ2日目の模様を取材した。一見して、それぞれの選手が切れのある動きをしていることが分かる。グァムで行われた一次キャンプで思い切り追い込んできた成果なのだろう。宮崎キャンプの目的は、個に特化して鍛え上げてきたベースを元にチーム戦術を作り上げること。今シーズンからシステムを4バックに変更すること、新卒選手以外に6人もの積極的な補強を行ったこともあり、この日は細かな戦術のチェックが行われた。

 攻撃では、高い位置から追い込んで奪ったボールを早くゴール前まで運ぶことが狙い。守備は、攻守の切り替えを早くしてカウンター攻撃を仕掛けるのがパターンだ。プレスをかける位置、ボールに関与しない選手のポジション取り、そして、人数をかけて囲い込みに行くタイミング等、小野監督が細かな指示を送り、確認を兼ねて同じシチュエーションからプレーを繰り返していた。

 宮崎キャンプでは多くの練習試合が組まれているが、これは実戦を通して課題を明確にし、それを咀嚼しながら身に付けてチームの完成を目指そうという狙いがある。また、中2日の試合を繰り返すことで、シーズン中のハードスケジュールを乗り切る肉体的、精神的な体力をつけることも大きな狙いの一つだ。あくまでも実戦重視。シーズン中の日程を意識したサイクルで宮崎キャンプは進んでいく。「優勝を目指して戦う」(小野監督)。広島はひとつ上のレベルで戦えるチームへの飛躍を目指す。


 9日は足を伸ばして鹿児島へ。国分市総合運動公園陸上競技場で福岡と清水との練習試合を取材するためだ。試合は45分×3本。1本目はトップチーム同士で試合が行われた。(「福岡通信:手応えを掴んだ清水戦」)主導権を握ったのは福岡。清水が長いボールを蹴ってくると見るや、守備のアタッキングゾーンを高めに修正。前からプレッシャーをかけて相手の自由を奪い、中盤に敷いた守備網で絡め取るようにボールを奪って、終始、リズムを掴んで試合を進めた。しかし、福岡は最後の1本の精度に欠き、結局、トップ同士で対戦した2本目の21分まではスコアレスドローに終わった。

 2本目の21分、清水は11人全員を控組に交代。当然のように主導権を握り続ける福岡は37分、田中からのクロスに太田が頭で合わせて1−0で勝利した。互いに控組同士の対戦となった3本目は清水が押し気味に展開。福岡はボランチが機能せず中盤の守備で遅れを取った。そして28分、ペナルティエリアの中にこぼれたボールを枝村が強烈に叩き込んだ。その後、福岡はエジウソンを中心に激しく攻め立てたが一歩及ばず。清水が1点のリードを守りきった。

 福岡は札幌戦とは打って変わって、中盤でプレスをかけて相手の自由を奪って試合を進めるという狙い通りのサッカー展開。きちんと課題を修正して試合に臨めたことが収穫だった。一方の清水は、攻め手と言えば長いボールをチェ・テウクに預けるか、低い位置からトップ下の平松に当てて、ここからスルーパス一発を狙う2パターンだけ。また守備面でも中盤のプレスが甘く、福岡に自由にボールをつながれた。チームの完成度は、まだまた不十分な印象だった。

 課題を明確にすることと、課題の修正を繰り返しながらチームを作り上げていく宮崎キャンプ。シーズンの開幕までは1ヶ月たらず。そのペースは少しずつ上がりつつある。
<前へ次へindexへ>
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送